マンションの室内風景

はじめに

「長く続いている空室をどうにかしたい…」

そんな悩みを抱える賃貸物件オーナーのなかには、リノベーションについて検討している方もいることでしょう。特に、築年数が古い物件は家賃を下げても空室が埋まりにくいため、リノベーションによって物件の魅力や価値を向上させることが空室対策として有効とされています。

とはいえ、やみくもにリノベーションを行っても空室がスムーズに埋まらない可能性があるほか、かかった費用を回収できずに経営難に陥るリスクもあります。まずは、リノベーションに関する基礎知識や空室が続いている原因などをしっかりと押さえ、費用対効果を慎重に見極めながら計画を進めることが大切です。

そこで、今回は空室対策として効果的なリノベーションの種類や費用をご紹介するとともに、事前に把握しておきたい注意点や流れについて詳しくまとめました。ご自身の物件に適したリノベーション内容や費用対効果について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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リノベーションは有効な空室対策のひとつ

リノベーション途中の室内風景

リノベーション(renovation)とは「改装」を意味し、大規模な改修工事を行うことによって物件に新しい価値や機能を追加することを指します。特に、築年数が古い賃貸物件では設備の老朽化やデザインの古さ、間取りの非効率性などが原因で入居希望者に敬遠される傾向がありますが、リノベーションを行えば物件の魅力が大きく向上し、空室改善を期待できます。

リフォームとの違い

空室対策としてリノベーションすることを検討する際に、「リフォームとはどう違う?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。どちらも物件の改修を指しますが、目的や工事の規模、費用面において以下のような違いがあります。

項目 リノベーション リフォーム
目的 価値向上・住まいの再設計 修繕・原状回復
工事の規模 中~大規模 小~中規模
間取り変更の有無 あり なし
費用 高額になることが多い 比較的安価

リノベーションは、既存の建物に対して新しい価値や機能を追加する改修であり、間取りの変更や設備の刷新、デザインの再構築などを通じて物件の競争力や居住性を高める目的で行われます。たとえ競争力の低い築古物件でも、現代のライフスタイルに合わせた魅力的な空間に生まれ変わらせることが可能です。

一方、リフォームは老朽化した部分の修復や原状回復を目的とした改修で、壁紙の貼り替えや設備の交換といった比較的軽微な工事が中心です。費用も抑えられ、短期間で施工できるメリットがありますが、物件の根本的な価値向上には限界があります。

以上のことから、リノベーションは設備や間取り、デザインが時代遅れの築古物件や、ターゲット層に合わせた空間設計を行いたい場合などにおすすめです。また、リフォームは現状の間取りや構造に満足しており、最低限の印象改善を希望するケースに向いています。

リフォームの空室対策については以下の記事でも解説しています。
>>空室対策にリフォームは効果的?メリット・デメリットや成功のコツを解説

リノベーションを行うメリット

空室対策としてリノベーションを行うことには、主に以下のようなメリットがあります。

  • 物件の競争力向上
    最新設備やトレンドを取り入れたリノベーションにより、築古物件でも周辺の築浅物件と肩を並べる競争力を獲得できます。特に内見時の第一印象が良くなり、入居希望者の決断を後押しする効果を期待できるでしょう。
  • ターゲット層の拡大
    これまで取り込めていなかった層をターゲットにできることも、リノベーションによって期待できる効果のひとつです。たとえばリモートワーク用のワークスペースを配置すれば、在宅での業務が多い入居希望者を取り込みやすくなります。
  • 家賃アップの実現
    リノベーションによって物件の内装がグレードアップすることで、相場より高めの家賃でも納得感を得られやすくなります。また、物件の評価額も上がり、売却時の利益につながることも大きな魅力です。

空室対策に効果的なリノベーションの種類と費用

マンション室内の図面

続いて、空室対策に効果的とされるリノベーションの種類と費用について見ていきましょう。

間取り変更リノベーション

間取り変更リノベーションとは既存の部屋の構成を見直し、現代のライフスタイルに合った空間設計を行う改修です。たとえば2DKから1LDKへ間取り変更を行えば、広々としたリビング空間を確保できます。

費用は工事範囲や物件の構造によって異なり、単に壁を撤去・新設する場合は数万円~数十万円ほどで工事可能ですが、骨組みを残した全体的な間取り変更においては800~1,600万円程度かかります。

水回りリノベーション

水回りリノベーションは、キッチンやバスルーム、洗面所、トイレといった水回り設備を一新する工事のことを指します。物件全体の清潔感が高まるほか、最新設備を導入すれば利便性が大きく向上するため、特に築15年以上の物件においておすすめの空室対策です。

費用は工事内容や部位によって大きく異なりますが、それぞれの水回り設備におけるリノベーション費用の目安は以下の通りです。

リノベーションする水回り設備 費用の目安
キッチン全体 50~200万円程度
※設置場所変更:+100~150万円程度
バスルーム全体 60~250万円程度
※設置場所変更:+150~250万円程度
洗面所全体 14~30万円程度
※設置場所変更:+20万円程度
トイレ全体 40~110万円程度
※設置場所変更:+100万円程度

断熱リノベーション

断熱リノベーションは断熱性能を高める内装工事のことで、夏は涼しく、冬は暖かい住環境を整備することは空室対策として非常に有効です。たとえば床・壁・天井への断熱材施工工事やペアガラス・内窓の設置、断熱玄関ドアへの交換などを行う場合、100~500万円程度の費用がかかります。

バリアフリーリノベーション

バリアフリーリノベーションによって高齢者や障がい者、子育て世帯など幅広い層に対応できる住環境を整えることも、物件の競争力向上につながります。具体的には段差解消や手すりの設置、開き戸から引き戸への変更などが該当し、家全体をバリアフリーにする場合の費用相場は500〜1,500万円ほどです。

フルリノベーション

フルリノベーションとは、物件の内装や間取り、設備を一新する大規模な改修を指します。築古物件でも新築同様の魅力を持たせられることが大きな魅力で、賃貸マンションにおける間取り別の費用相場は以下の通りです。

フルリノベーションする間取り 費用の目安
1LDK(20坪程度) 800〜1,200万円程度
2LDK(25坪程度) 1,000〜1,500万円程度
3LDK(30坪程度) 1,200〜1,800万円程度
4LDK(40坪程度) 1,600〜2,400万円程度

空室対策としてリノベーションを行う際の注意点

ふせんに描かれた注意マークとペン

空室対策としてリノベーションを実施する際は、下記の4つの点に注意しながら計画を進めることが大切です。

  • 空室原因やターゲット層を明確にする
  • コスト回収と費用対効果についてシミュレーションする
  • 補助金・助成金の利用を検討する
  • 実績豊富な施工会社に相談・依頼する

それぞれの注意点について、以下で詳しく見ていきましょう。

1. 空室原因やターゲット層を明確にする

どのようなリノベーションが効果的なのか見極めるために、まずは設備の老朽化や競合物件の増加、入居者ニーズとのズレといった空室の原因を特定することが重要です。また、単身者やファミリー、シニア層などターゲット層を再設定することで、該当物件に適したリノベーションの内容がより明確になるでしょう。

2. コスト回収と費用対効果についてシミュレーションする

リノベーション費用が賃貸経営に及ぼす影響を探るべく、コスト回収と費用対効果についてシミュレーションを行うことも大切な準備です。以下の計算式を用いて回収期間や年間賃料収入を算出し、リノベーションの投資が長期的に利益を生むのかを評価したうえで実施へと踏み切るとよいでしょう。

表面利回り= (年間賃料アップ額÷工事費) ×100
実質利回り= ((年間家賃収入の差額−維持管理コスト) ÷工事費) × 100
回収期間=工事費÷年間賃料収入

なお、回収期間は3年~3年半の範囲が理想とされており、これを超える場合は慎重な検討が必要です。

3. 補助金・助成金の利用を検討する

リノベーションの内容によっては国の補助金・助成金制度を利用できますが、申請前に着工すると対象外になるケースもあります。漏れなく活用して費用負担を軽減できるよう、事前にしっかりと確認しておきましょう。

なお、空室対策としてリノベーションを行う際は、下記の「住宅セーフティネット制度」や「子育てグリーン住宅支援事業」などが多く活用されています。

【住宅セーフティネット制度の概要】

目的 住宅確保要配慮者(高齢者・低所得者・障がい者・子育て世帯など)への賃貸住宅供給を促進
主な特徴
  • 空室物件を「セーフティネット住宅」として登録可能
  • 登録住宅の改修費に対する補助(最大100万円/戸)
  • 家賃低廉化や家賃債務保証料への補助もあり
  • 登録後10年間は住宅確保要配慮者専用住宅として管理
活用メリット
  • 空室を社会的ニーズに応じた住宅として活用できる
  • 改修費用の補助によってリノベーションの初期負担を軽減できる
  • 住宅情報提供システムに掲載され、入居促進につながる
注意点
  • 登録には耐震性や床面積などの基準を満たす必要あり
  • 一般入居者の募集が制限される期間があるため、戦略的な判断が必要

参考:住宅セーフティネット制度|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html

【子育てグリーン住宅支援事業(2025年度版)の概要】

目的 省エネ性能の高い住宅の普及と、子育て世帯・若者夫婦世帯の住宅取得・改修支援
主な特徴

【対象工事】

  • 開口部・躯体の断熱改修
  • エコ住宅設備の設置(高効率給湯器など)/戸)
  • 子育て対応改修(安全性・利便性向上)
  • バリアフリー改修 など

【補助額の目安】

  • 最大60万円(Sタイプ)/最大40万円(Aタイプ)
  • 補助率は工事内容により異なる(1/3〜1/2程度)
活用メリット
  • 築古物件の断熱・設備性能を向上させられる
  • 子育て世帯や若年層の入居促進につながる仕様に改修できる
  • 省エネ性能の向上により、長期的な資産価値維持にもつながる
注意点
  • 補助対象工事の組み合わせに条件あり(単独設備では不可)
  • 申請前に工事を開始すると補助対象外になるため、事前確認が必須

参考:住宅省エネ2025キャンペーン 子育てグリーン住宅支援事業
https://kosodate-green.mlit.go.jp/

4. 実績豊富な施工会社に相談・依頼する

リノベーションによる空室対策を成功させるためには、実績豊富な施工会社に相談・依頼することも重要なポイントです。過去の実績や施工例を確認し、賃貸物件のリノベーション経験が豊富にある業者を選ぶとよいでしょう。

また、施工工事だけでなく施工後のリーシング支援(入居者募集や広告戦略など)まで一貫したサポートを提供している業者に依頼できれば、より効果的に空室改善を目指せます。

空室対策としてリノベーションを行う流れ

ステップアップを積み上げるイメージ

ここでは、空室対策としてリノベーションを行う基本的な流れをご紹介します。

・【STEP1】現状分析&コンセプト設計

まずは、現地調査や入居者アンケートなどを通じて空室が発生している原因を多角的に分析します。そのうえでターゲット層(単身者、ファミリー、外国人など)を設定し、物件の強みを活かしたリノベーションのコンセプト(「リモートワーク対応型1LDK」や「女性向けのカフェ風ナチュラル空間」など)を設計しましょう。

・【STEP2】リノベーション内容の決定

物件の課題とターゲットニーズを照らし合わせながら、具体的な改修内容を決定します。補助金制度や税制優遇の対象となる工事があるかどうかも、この段階で確認しておくとよいでしょう。

・【STEP3】収支シミュレーション

改修にかかる費用と、リノベーション後に見込まれる家賃アップや稼働率改善をもとに収支シミュレーションを行います。投資回収期間(ROI)や利回り、キャッシュフローを試算し、費用対効果を数値で把握することで、リノベーションの妥当性を判断しやすくなります。

・【STEP4】施工会社の選定・相談

リノベーション内容が固まったら、施工会社の選定・相談に入ります。最低でも3社以上から相見積もりを取得し、費用だけでなく施工品質やアフター対応、リーシング支援の有無なども比較検討することが大切です。

・【STEP5】プランの検討・契約

施工会社の提案をもとに、最終的なリノベーションプランを検討します。契約時には工事内容やスケジュール、保証内容、費用明細のほか、補助金申請のサポート体制や施工後のトラブル対応についても確認しておくと安心です。

・【STEP6】工事~引渡し

契約後は、施工スケジュールに沿って工事が進行します。工事中は定期的に進捗確認を行い、設計通りに施工されているかをチェックすることが大切です。

工事が完了したら設備の動作確認や保証書・取扱説明書の受領を行い、引渡しを受けます。その後、物件写真や間取り図などの募集資料を整備し、速やかに入居者募集を開始しましょう。

効果的なリノベーションで空室を改善したいなら

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まとめ

空室対策としてのリノベーションは、物件に新たな価値をもたらし、入居希望者を惹きつけるための投資戦略です。間取り変更や水回りの刷新、断熱性能の向上といった種類ごとの特徴と費用感を見極めたうえで、空室の原因やターゲット層にマッチする設計を行うことが成功の鍵となります。

また、事前に収支シミュレーションを行ったり、実績豊富な施工会社を選定したりすることで、リノベーションの効果を最大化できるでしょう。ぜひ戦略的なリノベーションで物件の魅力を再構築し、空室改善を目指してみてください。