
はじめに
賃貸マンション・アパートの経営において、空室は「収益を左右する最大のリスク」と言っても過言ではありません。特に、空室が長期化すると経営に深刻な影響を及ぼすことから、空室が発生する原因やその影響について正しく理解し、効果的な対策を講じることが大切です。
そこで、今回は空室が発生する主な7つの原因について触れながら、実践的かつ成果が期待できる空室対策のアイデア8選をご紹介します。さらに、逆効果になりかねない「やってはいけない手法」についても詳しくまとめました。
空室リスクを最小限に抑えるためのヒントがたくさん詰まっているので、満室経営を目指すマンション・アパートオーナーはぜひ参考にしてください。
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賃貸経営に「空室対策」は不可欠

賃貸経営において空室対策は、安定した収益を確保するための最重要課題です。空室が発生すると収益が減少し、経営の安定性が損なわれるため、オーナーは積極的に対策を講じる必要があります。
特にローンを利用して物件を取得している場合、収入がない状態でも毎月の返済義務は発生するため、資金繰りに大きな支障をきたす点に注意が必要です。また、空室が続くことで金融機関からの評価が下がり、追加融資や資産運用の選択肢が狭まる可能性もあります。
このように、空室は単に「部屋が空いている状態」ではなく、賃貸経営の根幹を揺るがす重大なリスク要因です。だからこそ、空室対策はオーナーにとって最優先で取り組むべき課題といえます。
空室が発生する主な7つの原因

空室が発生する原因は多岐にわたりますが、一般的に以下の7つが挙げられます。
- 立地条件が悪い
- 初期費用や賃料が相場よりも高い
- 周辺に競合物件が多い
- 設備や間取りに問題がある
- 建物・入居者の管理ができていない
- 入居者募集活動が不十分
- 入居条件が厳しい
それぞれの原因について、以下で詳しく見ていきましょう。
1. 立地条件が悪い
立地条件が悪いと空室率が高くなる傾向があることは、賃貸経営を行っている多くのオーナーが実感している課題です。特に、最寄り駅まで徒歩15分以上かかる「駅遠物件」や治安が悪いエリアに所在する物件、コンビニ・スーパー・ドラッグストア・病院などの生活利便施設が徒歩圏にない物件は、空室が発生・長期化する傾向があります。
2. 初期費用や賃料が相場よりも高い
物件の初期費用が周辺相場より高い場合、空室が発生した際に新規入居者が見つかりにくいケースが多いです。物件探しをする多くの方は「初期費用をなるべく抑えたい」と考えるため、敷金・礼金・仲介手数料などが周辺物件よりも大幅に高いと候補から外されてしまう可能性があります。
また、家賃が地域の相場と比較して高すぎる場合も注意が必要です。たとえば、最新設備が導入されているなど家賃の高さに見合う付加価値があれば問題ないですが、同様の条件で家賃が割安な物件が周辺にある場合は敬遠される傾向があります。
3. 周辺に競合物件が多い
競合が多いエリアでは、物件の差別化ができていないと空室につながりやすい印象です。というのも、賃貸ポータルサイトで物件を検索する際には同じエリア・同じ価格帯・似たような間取りの物件が数多く並ぶため、設備やデザイン、立地環境などに特徴がない場合は競合物件に埋もれてしまい、内見すらされない可能性があります。
4. 設備や間取りに問題がある
賃貸物件において、入居者が求めるのは「快適性」と「機能性」が両立した住環境です。そのため、設備が古かったり、間取りが使いづらかったりすると日常生活においてストレスを感じやすくなり、結果として退去につながる可能性が高まります。
また、設備や間取りの快適性・機能性は物件を探している入居希望者にとっても重要です。たとえばユニットバスや一口コンロのミニキッチン、収納が少ない間取りなどは現代のニーズにフィットしづらく、その点がネックとなって内見や契約に至らないケースも多くみられます。
5. 建物・入居者の管理ができていない
建物の管理が不十分であることも空室につながりやすく、特に設備の老朽化や外観の劣化が目立つ物件は入居者や入居希望者にとって大きな不安要素となります。また、入居者からの意見や要望に対して迅速な対応がなされない場合も入居者の満足度が低下して退去につながったり、悪い評判が出て新規入居者を獲得しづらくなったりする傾向があります。
6. 入居者募集活動が不十分
いくら物件が魅力的であっても、適切な入居者募集活動が行われていない場合は空室が埋まりづらくなります。特に、物件の魅力を的確に伝える広告戦略がなければほかの物件情報に埋もれてしまい、問い合わせすら得られない可能性もあるでしょう。
7. 入居条件が厳しい
賃貸物件において「保証人必須」「外国籍不可」「高齢者不可」「ペット不可」などの条件があると、入居希望者の選択肢から外れてしまい、空室が埋まりづらい傾向があります。また、収入に関する詳細な情報を提示する必要があるなど、入居審査が過度に厳格である場合も注意が必要で、「書類集めが面倒」「審査に通らなさそう」といったネガティブな印象によってせっかくの入居希望者を逃してしまう可能性があります。
効果的な空室対策のアイデア8選

ここでは前述した空室の原因を踏まえたうえで、実践的かつ成果が期待できる空室対策のアイデアを8つご紹介します。物件の魅力を最大限に引き出し、入居率の向上を目指すためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
1. 募集方法の見直し
物件の魅力を最大限にアピールするには、広告内容や掲載写真の見直しが大変有効です。たとえば写真の質や間取り図の見せ方、キャッチコピーの工夫などで第一印象を改善したり、動画や360度ビューを導入したりすることで、物件の広さや清潔感を効果的に伝えられます。
また、不動産会社のスタッフが現地の物件を訪れ、映像や音声を通じて物件の詳細をオンラインで紹介する「オンライン内見」や、スタッフの立ち会いなしで自由に物件を見学できる「セルフ内見」を導入するのもおすすめです。入居希望者の都合に合わせた柔軟な対応が可能となり、入居者を集めやすくなります。
2. 初期費用の軽減
「ゼロゼロ物件」と呼ばれる敷金・礼金無料の条件や、一定期間家賃が無料になる「フリーレント」などの導入によって初期費用を軽減し、入居のハードルを下げることも効果的な空室対策です。
敷金・礼金はそれぞれ家賃1〜2か月分が相場で、これらがゼロになれば入居者は初期費用を数十万円単位で削減できます。これは特に若年層や単身者、転勤者など、まとまった資金を用意しづらい層にとって魅力的な条件となり、内見率の向上につながります。
また、フリーレントにおいては契約開始から1〜2か月間の家賃を無料にするケースが多く、「家賃を下げずにお得感を出せる」点が魅力です。物件の価値を維持しながら早期成約を促すことができ、空室期間の短縮にも効果を得られるでしょう。
ただし、ゼロゼロ物件とフリーレント物件には短期退去や収益減のリスクもあるため、違約金を設定するなど契約内容の工夫が重要です。
3. 人気設備の導入
空室対策として人気設備を導入することは、物件の競争力を高め、入居率の向上を図れる非常に効果的な施策です。特に以下の設備があると物件選びの決め手になることが多く、成約率が大きく改善される可能性があります。
- 無料インターネット(単身者やテレワーカーに人気)
- 宅配ボックス(共働き世帯や単身者に人気)
- オートロックや防犯カメラなどの防犯設備(女性やファミリー世帯に人気)
- 浴室乾燥機(共働き世帯に人気)
なお、設備の選定時は物件のターゲット層を考慮し、ニーズに合ったものを導入することがポイントです。また、設備を導入したらすぐに物件情報を更新し、写真やキャッチコピーでしっかりとアピールすると成果につながりやすいでしょう。
4. 入居条件の緩和
賃貸物件の空室対策として、入居条件を緩和させることもひとつの方法です。たとえば「ペット可」「ルームシェア可」「楽器相談可」「外国籍の方歓迎」といった柔軟な条件を設定することで、従来のターゲット層に加えて新たなニーズ層を取り込むことができ、空室解消を期待できます。
5. リフォーム・リノベーション
築年数が古い物件の場合は、リフォームやリノベーションによって居住空間の魅力を高めるとよいでしょう。特にキッチン・浴室・トイレ・洗面所といった水回り設備が老朽化していると、入居者の満足度が低下して退去につながったり、内見時の成約率が下がったりする傾向があるため、新しい設備への交換がおすすめです。
リフォームの空室対策については以下の記事でも解説しています。ぜひ併せてご確認ください。
>>空室対策にリフォームは効果的?メリット・デメリットや成功のコツを解説
6. キャンペーンの実施
空室対策として「家賃1か月無料」や「家電プレゼント」などのキャンペーンを実施することは、入居希望者の背中を押す有力な手段です。契約へのハードルを下げる効果が高く、物件選びの決め手になることも多いでしょう。
ただし、こうした特典は期間限定で提供することが重要で、限定性があることで「今契約すれば得をする」という動機づけが働き、即決につながりやすくなります。また、短期退去のリスクを避けるために、一定期間の入居を条件とした違約金設定なども併せて検討すると安心です。
7. 入居者・退去者アンケートの実施
「どのような空室対策を行ったらいいのかわからない」とお悩みなら、入居者・退去者アンケートを実施するとよいでしょう。実際に物件で生活している、あるいは生活していた方の声を聞くことで、オーナー自身では気づきにくい改善点や潜在的な不満を把握でき、次の入居者獲得に活かすことが可能です。
なお、アンケートはチェック式と記述式を組み合わせて作成すると回答しやすく、具体的な意見もしっかりと得られます。また、回答者にQUOカードなどの特典を提供すると協力を得やすいでしょう。
退去理由については以下の記事でも解説しています。ぜひ併せてご確認ください。
>>入居者の退去理由とは?早期退去を防ぐための対策もご紹介
8. 管理会社の利用/連携強化
空室回避や解消に向けて、管理会社の活用および連携強化もおすすめの対策です。管理会社は物件管理のプロフェッショナルであり、入居者募集活動や契約手続き・トラブル対応など、賃貸経営に必要な業務を総合的にサポートしてくれます。
もし現在利用している管理会社の対応に不満がある場合は、管理会社の変更を検討するとよいでしょう。特に「空室対策の提案がない」「広告活動が不十分」「入居者トラブルへの対応が雑」などの問題がある場合は空室が長期化するリスクが高いため、早めに乗り換えることをおすすめします。
管理会社の役割やメリットについては以下の記事でも解説しています。ぜひ併せてご確認ください。
>>賃貸管理とは?不動産管理会社の役割と利用のメリット・デメリット
管理会社の変更については以下の記事でも解説しています。ぜひ併せてご確認ください。
>>賃貸マンションの管理会社を変更する方法とトラブルを避ける注意点
「やってはいけない空室対策」に注意

空室対策は重要ですが、間違った方法を選ぶと逆効果になることもあります。ここでは、一般的に「やってはいけない」と言われることの多い空室対策についてチェックしていきましょう。
家賃を安易に値下げする
家賃を下げることで一時的に空室が埋まる可能性はありますが、長期的に見ると収益性の低下や物件価値の下落につながるリスクが高いです。また、一度下げた家賃を元に戻すのは困難であるため、安易な値下げは避けるほうがよいでしょう。
費用対効果を無視してリフォーム・リノベーションを行う
見た目を良くするために高額な工事を行っても、エリアの家賃相場や入居者ニーズに合っていなければ投資に見合うリターンが得られず、経営を圧迫する結果になりかねません。まずはそのリフォーム・リノベーションを行うことで物件の魅力や価値がどの程度向上するのか、どれくらいの期間で投資費用を回収できるかを冷静に試算し、費用対効果を考慮した内容のリフォーム・リノベーションを行うことが大切です。
リスクを考えずに入居条件を緩和する
入居条件の緩和は効果的な空室対策ですが、リスクを十分に考慮せずに実施すると逆効果になる可能性があるため、慎重な対応が求められます。
たとえば「ペット可」にすればペットを飼っている層を取り込みやすくなるものの、傷や臭い、騒音などの問題が発生しやすくなるというデメリットもあります。それによって原状回復費用が高くついたり、近隣住民とのトラブルが発生したりするリスクがあるため、ペットの飼育を許可する際には原状回復義務の確認やペットに関する利用規約の設定が大変重要です。
また、外国籍の入居者を受け入れる場合も、文化や生活習慣の違いによるトラブルが発生する可能性がある点に注意しましょう。ゴミの分別や騒音マナーについて丁寧に説明したり、契約内容を母国語で補足する資料やガイドラインを用意したりといった対策が有効です。
やってはいけない空室対策については以下の記事でも解説しています。ぜひ併せてご確認ください。
>>やってはいけない4つの空室対策|入居率アップに有効な方法とは
効果的な対策で空室を回避したい方へ

効果的な対策によって空室を回避・解消したいなら、空室対策に強い管理会社との二人三脚で賃貸経営を行うとよいでしょう。専門的な賃貸経営ノウハウや豊富なネットワークを持つ管理会社と連携することで、高い入居率による安定した経営を目指せます。
なかでもLIXILリアルティの賃貸管理サービスは、全国の仲介ネットワークを活用した入居者募集力や、住宅設備メーカーとしての知見を活かしたリフォーム提案力、24時間対応のトラブル受付体制などに定評があります。空室対策から資産価値の維持・向上までトータルサポートを行っておりますので、空室にお悩みの方や管理会社の対応に不満がある方など、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
空室が発生する背景には、立地条件や設備環境、家賃設定、広告戦略、管理体制など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。そのため、まずは物件ごとの状況を丁寧に分析し、ターゲット層に合った空室対策を組み合わせて実行することが大切です。
また、一時的な効果を追求するのではなく、長期的な視点で物件の魅力を高める戦略を立てることで、空室を「選ばれる物件」に育てることができるでしょう。ぜひ信頼できる管理会社との連携によって成果につながる空室対策を実施し、満室経営を目指してはいかがでしょうか。