はじめに
入居者の家賃滞納は、賃貸経営において最も多いトラブルのひとつです。なかには「入居者が家賃を滞納したまま退去したが、どうすればよいのか」とお困りの場合もあるでしょう。
家賃収入はオーナーの生命線であることから確実に回収したいものの、督促方法によっては状況を悪化させる恐れがあります。対応を誤ると違法行為として逆にオーナー側が訴えられてしまうこともあるため、焦らず慎重に対処することが大切です。
そこで、今回は入居者が家賃を滞納したまま退去した場合にオーナーが取るべき適切な対処法を詳しくまとめました。また、家賃滞納トラブルを未然に防ぐ方法についても併せてご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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家賃を滞納したまま退去…オーナーがやるべきことは?
入居者が家賃を滞納したまま退去した場合、オーナーとしてまず行いたいのが「家賃の回収」です。この状況においては入居者の行方がわからないケースも多いですが、次の見出しでご紹介する手順に沿って慎重に回収手続きを進めていきましょう。
また、入居者が無断で退去した場合でも賃貸借契約が自動的に解除されるわけではないため、正しい手順で賃貸借契約を解除し、次の入居者を迎え入れる準備をすることも重要です。
家賃を滞納したまま退去してから家賃回収までの流れ
ここでは、入居者が家賃を滞納したまま退去した場合の家賃回収手順を押さえておきましょう。基本的には下記のように段階を踏んで回収を行います。
- 本人・連帯保証人に連絡する
- 本人・連帯保証人に内容証明郵便を送付する
- 裁判所に明け渡し訴訟提起を行う
- 裁判所に強制執行の申し立てを行う
それぞれの具体的な対処法は以下の通りです。
1. 本人・連帯保証人に連絡する
まずは入居者本人との接触を試みて、難しい場合は入居者の代わりに滞納家賃を支払う義務がある「連帯保証人」に連絡することから始めるとよいでしょう。もし管理会社に業務委託を行っている場合は、管理会社を通じて督促を行うケースが一般的です。
連絡は電話や訪問、あるいは書面により行い、家賃滞納が発生している事実や支払いを催促する旨、および支払期限を明確に伝えます。なお、家賃保証会社に加入している場合は保証会社が家賃や退去時の原状回復費用を肩代わりしてくれるため、オーナーや管理会社から直接本人や連帯保証人には連絡せず、家賃保証会社とコンタクトをとるようにしましょう。
2. 本人・連帯保証人に内容証明郵便を送付する
上記1のステップでの回収が難しい場合は、入居者本人や連帯保証人へ督促状を「内容証明郵便」で送付します。内容証明郵便とは郵便局が送付内容や送付日時を公的に証明するサービスで、のちに訴訟を提起する際の証拠としても有効です。
内容証明郵便の利用方法や料金については以下のページでご確認ください。
公式:日本郵便「内容証明」
内容証明郵便の記載内容
家賃督促の内容証明郵便には以下の内容を記載します。
- 賃貸借契約の内容(不動産の所在や賃料、支払い時期、契約日など)
- 家賃の請求額(滞納期間と請求額の内訳も含む)
- 振込先口座
- 支払い期限
- 賃貸借契約解除の意思表示
- 期限までに支払わない場合の法的措置の予告
なお、支払い期限は内容証明到達から1週間以内の日付に設定するのが一般的です。その際は「受領日から7日以内」とするよりも、「〇月〇日まで」と具体的な日付を記載するほうがわかりやすいでしょう。
また、内容証明郵便には配達証明を付けることをおすすめします。配達証明を付けると文書が確実に送達されたことを郵便局が証明してくれるため、相手方の「そんな郵便物は届いていない」「受け取った覚えがない」といった言い分は通用しなくなります。
内容証明郵便の送付先を調べる方法
入居者が家賃を滞納したまま退去した場合は、入居者の所在が不明であるケースも多いです。その場合は役所にて入居者の住民票を取得し、現在の所在を確かめるとよいでしょう。
「本人以外の第三者が住民票を取得できるのか」と疑問をお持ちの方もいるかもしれませんが、実は住民基本台帳法第12条の3第1項に基づき、オーナーは家賃を回収する権利によって入居者本人でなくても住民票を請求することが可能となっています。ただし、入居者が新しい居住地に住民票を移動していないと、住民票を取得しても賃借人の所在を掴むことはできません。
住民票を取得しても入居者の所在がわからない場合は、家賃の支払い請求や賃貸借契約解除の意思表示が相手に到達したものとしてもらえる「公示送達」を利用するとよいでしょう。公示送達は訴訟の提起時にも利用できるため、訴訟の提起が避けられないと判断した場合は意思表示を目的とした公示送達は利用せず、訴訟を提起する際に用いるケースが一般的です。
3. 裁判所に明け渡し訴訟提起を行う
内容証明郵便で請求しても支払われない場合は、裁判所に明け渡し請求訴訟を提起します。明け渡し請求訴訟とは入居者に対して賃貸借契約の解除と物件の明け渡しを求める裁判のことで、入居者本人だけでなく連帯保証人に対する裁判を同時に提起することも可能です。
なお、訴訟の提起には専門的な知識が求められるため、弁護士に依頼して手続きを進めるとよいでしょう。
4. 裁判所に強制執行の申し立てを行う
入居者が家賃を滞納したまま退去するケースでは、大半の場合においてオーナー側が勝利し、建物の明け渡しが認められます。しかし、入居者側が裁判で敗北したにもかかわらず物件を明け渡さないこともあり、その場合には「強制執行の申し立て」へと進むことになります。
強制執行とは裁判所が入居者に対して物件の明け渡しを強制することであり、裁判所の執行官によって実施される制度です。もし室内に家財道具が残っている場合は専門業者が撤去・搬出し、執行官の管理のもとで廃棄や売却の手続きが行われます。
ちなみに裁判所費用と業者へ支払う費用はオーナーが負担することになるケースが多いものの、家財道具が売却されればその売却代金を執行費用に充てることが可能です。
家賃回収手続きを進める際の注意点
家賃回収の手続きを進める際には、下記の3点に注意が必要です。
- 督促の連絡は慎重に行う
- 強制執行前に部屋に立ち入らない
- 賃貸借契約が解除されたら早急に原状回復や入居者募集を行う
オーナーとして具体的にどのような点に気をつける必要があるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
督促の連絡は慎重に行う
家賃滞納に関する連絡や訪問は、入居者のプライバシーを尊重しながら慎重に行う必要があります。特に、以下のような督促は違法行為や契約違反になる可能性が高いため注意しましょう。
- 早朝や深夜の時間帯に督促する
- 同じ日に何度も督促する
- 入居者の勤め先や学校に督促の連絡をする
- ドアやポストに督促の張り紙をする
なお、督促の連絡や訪問は9:00~18:00の時間帯に行うのが一般的なマナーとされています。
強制執行前に部屋に立ち入らない
家賃回収手続きを進める際は、強制執行前に該当物件内に立ち入ることのないようにしましょう。賃貸借契約が継続している間は物件を占有する権利が入居者側にあるため、たとえ物件の所有者であっても無断で部屋に立ち入ったり、鍵を交換したりすることはできません。
もしオーナーの勝手な判断で入室した場合は違法行為とみなされ、場合によっては刑事罰や損害賠償の対象となることもあります。なお、裁判前や裁判中にどうしても部屋に立ち入る必要がある場合、法的な手続きを踏んで入居者の同意や仮処分命令などの許可を得られれば入室可能です。
賃貸借契約が解除されたら早急に原状回復や入居者募集を行う
賃貸契約を解除した後は、早急に物件の原状回復や入居者募集の準備を始めることが重要です。入居者がいない期間が長くなればなるほど経営悪化のリスクが高まるため、なるべく早く次の入居者を迎える体制を整えましょう。
ちなみに、原状回復費用は原則として入居者が負担することになっています。ただし、敷金や保証金などの預かり金でまかなえず、入居者と連絡が取れない場合は、ひとまずオーナーの自己負担で行う必要があります。
家賃を滞納したまま退去されるトラブルを防ぐには?
ここまでご紹介したように、家賃を滞納したまま退去されるとさまざまな対応を慎重に進めなければならず、時間や費用、心理的負担が大きくのしかかります。また、退去とまではいかないにしても、家賃滞納の発生自体がオーナーにとって深刻なトラブルであるため、適切な予防策を講じて滞納リスクを最小限に抑えることが大切です。
具体的にどのような対策が効果的なのか、以下で詳しく見ていきましょう。
厳正な入居審査を行う
家賃滞納を防ぐためには、入居審査を厳正に行うことが重要です。審査時には主に以下の項目をチェックし、継続的に家賃を支払えるか、トラブルを起こすような人物ではないか慎重に見極めるとよいでしょう。
入居希望者の支払い能力
年収や職業、貯金残高を確認し、十分な支払い能力があるかどうか判断します。一般的には、年収としては家賃の36倍程度、職業としては経営が安定した企業に勤める正社員や事業が安定している経営者、貯金残高としては家賃の1〜2年程度以上であると安心です。
入居希望者の信用情報
信用情報を扱う機関に「開示請求」を行い、入居希望者の信用情報を確認することも重要です。ローンの返済滞納やクレジットカードの支払い遅延、債務整理、自己破産といった履歴がある場合は信用度が低いと判断できます。
入居希望者の人柄
入居後にトラブルを起こしそうな人物でないかどうかも、入居審査を行ううえで重視したいポイントです。物件案内時の態度や言葉遣いなどから信頼性を見極めるとよいでしょう。
連帯保証人の支払い能力
連帯保証人を立てる場合は、連帯保証人の支払い能力にも注目するとよいでしょう。入居希望者と同様に年収や職業などをチェックし、支払い能力に不安がある場合は注意が必要です。
家賃のクレジットカード決済を導入する
家賃滞納リスクの抑制には、家賃の支払い方法を「クレジットカード払い」にすることも効果的といわれています。クレジットカード払いにすれば毎月決まった日にカード会社経由で家賃が支払われるため、家賃滞納が発生することはありません。
万が一入居者の口座残高が不足した場合であっても、クレジットカード会社が立て替え払いを行ってくれるほか、不足分の督促もカード会社が行ってくれます。ただし、クレジットカードの決済手数料はオーナー側が負担することになるため、あらかじめ手数料も加味したうえで家賃を設定する必要があるでしょう。
家賃保証会社を利用する
家賃保証会社を利用することも、家賃滞納したまま退去される事態を防ぐためのひとつの対策です。家賃保証会社とは、入居者が家賃を滞納した場合に代理で家賃を支払ってくれる会社のことで、滞納分の督促も保証会社が行ってくれます。
オーナー側としては家賃収入の安定性確保や回収する手間の削減といったメリットがありますが、入居者に保証料や加入手数料などの費用を負担してもらわなければならない点に注意が必要です。
家賃保証会社を利用するメリットについては以下の記事でも解説しています。
>>家賃保証会社とは?家賃滞納への対応とオーナーのメリット
家賃回収に強い管理会社を利用する
家賃を滞納したまま退去した入居者への対応には時間も手間もかかるため、そういった事態を未然に防げるよう、信頼できる管理会社に業務委託することも大切です。家賃回収に力を入れており、口コミ評判も高い管理会社を利用すると効果的に家賃滞納を防げます。
もし現在委託している管理会社の対応に不安がある場合は、管理会社の変更を検討するとよいでしょう。
管理会社の選び方については以下の記事でも解説しています。
>>管理会社の選び方ポイント5選
管理会社の変更については以下の記事でも解説しています。
>>賃貸マンションの管理会社を変更する方法とトラブルを避ける注意点
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まとめ
入居者が家賃を滞納したまま退去した場合、オーナー側は適切なステップを踏んで「滞納家賃の回収」と「賃貸借契約の解除」の2つの手続きを行わなければなりません。違法に督促を行ったり、賃貸借契約の解除前に無断で部屋に立ち入ったりするとさらなるトラブルに発展する恐れがあるため、ここでご紹介した注意点を参考にしながら慎重に手続きを進めていきましょう。
また、家賃滞納への対応には多くの時間と手間がかかることから、普段から家賃滞納への対策をしっかりと行っておくことが大切です。ぜひ家賃回収に強い管理会社を利用したり、家賃のクレジットカード払いを導入したりといった方法で家賃滞納の発生を防ぎ、安定した収益を維持していきましょう。