はじめに
賃貸物件オーナーのなかには、「空室がなかなか埋まらない」「入居率が下がって収益が不安定になってきた」といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。特に築年数が経過した物件や競合が多いエリアでは、入居率の維持が難しい傾向があります。
しかし、そのまま放置してしまうと空室期間が長期化し、家賃収入の減少や物件の資産価値低下につながる恐れがあります。こうした状況を打開し、長期的に安定した経営を行うためには、入居率を高めるための具体的な対策を戦略的に講じることが大切です。
この記事では、入居率の基本的な考え方から入居率が上がらない原因、改善のための7つの具体策まで詳しく解説します。ぜひ参考にしながらご自身の物件の課題と対策を明確にし、満室経営への大きな一歩を踏み出しましょう。
LIXILリアルティの賃貸管理サービスでは、賃貸経営のエキスパートが収益の最大化をサポートしております。サービスについての資料をご用意しておりますので、ぜひこちらからダウンロードください。
>>資料をダウンロードする
そもそも「入居率」とは?

入居率とは、アパートやマンションなどの賃貸物件における賃貸可能な戸数のうち、実際に入居している戸数の割合を示す数値です。賃貸経営の健全性や収益性を測るうえで非常に重要な指標であり、オーナーや管理会社は常に注視する必要があります。
入居率の重要性
所有している賃貸物件の入居率が高いと、以下のようなメリットがあります。
- 安定した家賃収入を得られる:空室が少ないことから毎月の収益が安定し、キャッシュフローが良好になります。
- 金融機関からの評価が高まる:高い入居率は物件の収益性を示すため、金融機関からの信頼度が上がり、融資条件が有利になることがあります。
- 物件の資産価値が維持・向上する:稼働率が高い物件は市場価値も高く、売却時にも有利に働きます。
- 空室対策にかかるコストを抑えられる:空室対策の必要性が減るため、広告費やリフォーム費用などの空室対策コストを削減できます。
一方で、入居率が低い場合は空室による損失が発生し、経営が不安定になります。特に築年数が経過した物件や賃貸需要が低いエリアでは高い入居率の維持が難しいため、戦略的な空室対策が不可欠です。
入居率の種類と計算方法
入居率には「時点入居率」「稼働入居率」「賃料入居率」の3つの種類があり、それぞれの概要と計算方法をしっかりと理解することで賃貸物件の運営状況を正確に把握できます。
時点入居率
■概要:ある特定の時点における入居状況を示す指標です。月末や四半期末など、任意のタイミングでの稼働状況を把握する際に用いられます。
■計算式:入居戸数÷総戸数×100(%) (例)総戸数20戸のうち18戸が入居している場合:時点入居率=18÷20×100=90%
稼働入居率
■概要:一定期間(例:1か月、1年)における稼働状況を示す指標。空室期間の長さも加味されるため、より実態に近い運用状況を把握できます。
■計算式(年間ベース):(365 ×総戸数−空室日数)÷(365×総戸数)× 100(%) (例)総戸数10戸で、年間の空室日数が300日だった場合:稼働入居率= (3650−300)÷3650×100=91.8%
賃料入居率
■概要:家賃収入ベースでの稼働率を示す指標。部屋ごとに賃料が異なる場合でも収益性を正確に把握できるため、投資判断に有効です。
■計算式:実際の家賃収入÷満室時の想定家賃収入×100(%) (例)満室時の家賃収入が月100万円、実際の収入が月85万円の場合:賃料入居率=85÷100×100=85%
目標にしたい入居率の目安
一般的に、安定したアパート経営を実現するための入居率の目安は「95%以上」とされています。これは、空室による損失を最小限に抑え、家賃収入を安定させるための基準です。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が発表した「日管協短観」によると、2022年度および2023年度の全国平均入居率は約95%を維持しており、特に首都圏や関西圏では96%を超える水準となっています。
| 2022年度の平均入居率 | 2023年度の平均入居率 | |
|---|---|---|
| 首都圏 | 95.8% | 96.6% |
| 関西圏 | 94.9% | 96.6% |
| その他の地域 | 92.9% | 92.6% |
| 全国 | 95.3% | 95.8% |
出典: 出典:市場データ(日管協短観)|公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会
一方で、入居率が70~80%になると経営はやや苦しい状態となり、50%ほどに落ちるとかなり厳しい状況に陥るため、入居率が90%を下回った段階で本格的な空室対策を講じる必要があります。ただし、入居率の目安は一律ではなく、エリア特性や物件種別、投資戦略によって大きく異なることから、地域や物件の状況に応じた目標設定が重要です。
入居率が上がらない原因7選

所有物件の入居率が思うように伸びない場合は、以下のような要因が潜んでいるケースが多いです。
- 立地条件が悪い
- 建物や間取り、設備が古い
- 家賃・敷金・礼金が相場より高い
- 入居条件が厳しい
- 募集活動が不足している
- 内見時の印象が悪い
- 管理状態が悪い
具体的にどのような原因が多いのか、以下で詳しく見ていきましょう。
1. 立地条件が悪い
物件の立地は、入居希望者が物件を選ぶ際に重視するポイントのひとつです。特にターゲット層のライフスタイルや価値観に合っていない立地は、入居率の低下を招く大きな要因となります。
たとえば、単身者の場合は「駅からの距離」「都心へのアクセス」「周辺の飲食店やコンビニの充実度」など、利便性を重視する傾向があります。一方で、ファミリー層は「治安の良さ」「教育環境」「公園や病院の近さ」など、生活環境の安全性や快適さに注目して選ぶケースが多い印象です。
そのため、物件が駅から遠い、交通アクセスが悪い、周辺に生活施設が少ないといった立地条件の場合、ターゲット層のニーズと合致せず、空室が長期化する可能性があります。
2. 建物や間取り、設備が古い
築年数が経過した物件は外観や共用部の老朽化が目立ちやすいほか、間取りや設備が現代のライフスタイルに合っていないことが多く、入居者から敬遠される傾向があります。
たとえば、以下のような要素はマイナス評価につながりやすいポイントです。
- 3DKなどの細かな間取り:現代では開放感のある1LDKや2LDKが好まれる傾向があり、細かく仕切られた間取りは使い勝手が悪く感じられることがあります。
- 洗濯機置き場がない:室内に洗濯機置き場がない物件は、特に単身者や若年層にとって大きな不便となり、選ばれにくくなります。
- インターホンが古い:モニター付きインターホンが主流となっているなかで、音声のみの旧式インターホンは防犯面で不安を感じさせる要因になります。
- インターネット未対応:高速インターネットが利用できない、あるいは別途契約が必要な物件は、テレワークや動画視聴が日常化した現代では大きなマイナスポイントになります。
- 収納スペースが少ない:収納力の低さは生活のしづらさに直結し、特にファミリー層には敬遠されがちです。
このように、設備や間取りの古さは入居者の快適な暮らしを妨げる要因となり、結果として入居率の低下を招きます。
3. 家賃・敷金・礼金が相場より高い
賃貸物件を探す入居希望者は、複数の物件を比較検討するのが一般的です。その際、家賃や初期費用(敷金・礼金など)が周辺相場より高い物件は選ばれにくくなる傾向があります。
特に近年では、「敷金・礼金ゼロ」や「フリーレント付き」といった初期費用を抑えた物件が増えており、価格面での競争が激しくなっています。また、家賃が相場より高い場合も注意が必要で、その金額に見合った価値を感じられない物件であれば、入居者はより条件の良い他物件へ流れてしまう可能性が高いでしょう。
4. 入居条件が厳しい
賃貸物件の入居条件が厳しすぎると入居希望者の選択肢から外れてしまい、結果として空室が長期化する原因になります。特に以下のような条件は、入居者層を大きく制限してしまう可能性があるため注意が必要です。
- ペット不可:ペットを飼いたい、あるいはすでに飼っている層は物件選びの段階で除外されます。近年はペット可物件のニーズが高まっており、対応していないと競争力を失う可能性があるでしょう。
- 高齢者NG:高齢化が進むなかでシニア層の賃貸需要が増加傾向にあるため、高齢者を受け入れない方針は潜在的な入居者を逃すことにつながります。
- 保証人必須:保証人を確保できない若年層や外国人などにとっては大きなハードルとなり、契約を断念するケースも少なくありません。
5. 募集活動が不足している
いくら物件の立地や設備が整っていても、入居希望者に情報が届かなければ契約にはつながりません。募集活動が不十分な場合は物件の認知度が低くなり、内見の機会すら得られないまま空室が続いてしまうことがあります。
特に近年では、ポータルサイトやSNS、動画などを活用した情報発信が主流となっていることから、掲載内容の質や更新頻度も重要な要素です。写真が少ない、間取り図が不鮮明、周辺環境の説明がないといった情報不足の状態では入居希望者の興味を引くことができず、空室の長期化につながる可能性があります。
6. 内見時の印象が悪い
入居希望者が物件を実際に訪れる「内見」は、契約に至るかどうかを左右する重要なステップです。このときの第一印象が良ければ「ここに住みたい」と思ってもらえる可能性が高まり、逆に印象が悪ければ契約にはつながりません。
印象を左右する主な要素は以下の通りです。
- 清掃状態:玄関や水回り、共用部が汚れていると「管理が行き届いていない」といった印象につながり、敬遠される原因になります。
- 照明や空気感:暗い部屋やカビ臭い空気は、居住意欲の低下を招く恐れがあるため注意が必要です。
- 担当者の対応力:物件の魅力を的確に伝える説明力や、質問への丁寧な対応も契約率に大きく影響します。無愛想な対応や知識不足は、物件の印象まで悪くしてしまう可能性があるでしょう。
7. 管理状態が悪い
物件の管理状態も、入居者の満足度や定着率に直結する重要な要素です。たとえば以下のような管理不備があると内見時の印象に悪影響を与えるほか、既存の入居者が不満を抱えて退去する原因にもなり、結果として入居率の低下を招くことになります。
- エントランスや廊下にゴミが放置されている
- 照明が切れていても長期間そのままになっている
- 騒音や近隣トラブルに対して管理会社の対応が遅い
- 郵便受けやゴミ置き場が荒れている
オーナー必見!入居率を上げる7つの方法

入居率を高めるには、物件の魅力を最大限に引き出し、入居希望者に「住みたい」と思わせる工夫が不可欠です。ここでは、空室対策として効果的な7つの改善策を具体的にご紹介します。
1. 立地条件が不利な場合は「物件の魅力を引き出す工夫」をする
「駅から遠い」「周辺に商業施設が少ない」「治安や利便性に課題がある」などと立地条件が不利な物件でも、その地域ならではの魅力を訴求することで入居率を改善することが可能です。
たとえば、以下のようなポジティブな要素を活かすことで特定の層にアピールできます。
- 「静かな住環境」:騒音が少なく、落ち着いた暮らしができる点を強調すると、高齢者やテレワーク層に好まれる傾向があります。
- 「自然が近い」:公園や緑地、川沿いなどの自然環境が整っている場合は、子育て世帯やアウトドア志向の層に訴求できます。
- 「子育てに適した地域」:保育園や学校が近い、地域の治安が良いなどの情報はファミリー層にとって大きな魅力です。
また、周辺施設の紹介や地域イベントの情報を物件紹介に盛り込むことで、生活イメージを具体的に伝えることができます。立地の弱点を補う視点で物件の価値を再構築することが、空室対策の第一歩です。
2. 設備・間取りのリフォーム・リノベーションを行う
築年数が経過した物件や時代に合わない間取り・設備は、入居希望者から敬遠される大きな要因です。特に若年層やファミリー層は、快適で機能的な住環境を重視する傾向が強く、古さや使いづらさを感じる物件は選ばれにくくなります。
そこで有効なのが、設備の刷新や間取りの見直しによるリフォーム・リノベーションです。以下のような対策を講じることで物件の競争力を高め、入居希望者の「住みたい」という気持ちを引き出すことができるでしょう。
- インターネット設備の導入
- 宅配ボックスの設置
- 浴室乾燥機の導入
- 間取り変更(例:3DK→2LDK)
リフォーム・リノベーションには初期投資が必要ですが、長期的には空室期間の短縮や家賃の維持・向上につながるため、費用対効果の高い対策といえます。
リフォームの空室対策については別の記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
>>空室対策にリフォームは効果的?メリット・デメリットや成功のコツを解説
リノベーションの空室対策については別の記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
>>空室対策に効くリノベーションは?種類や費用、注意点を解説
3. 家賃・初期費用を見直す
家賃や初期費用の見直しは、物件の魅力を損なわずに入居者の心理的ハードルを下げる有効な手段です。賃貸物件情報のポータルサイトにて同じエリア・間取り・築年数の物件を検索し、相場を把握したうえで適切な価格戦略を講じるとよいでしょう。
もし所有物件の家賃が相場より高い場合は、家賃を下げることで反響数が増加し、空室期間の短縮につながります。逆に、相場より安すぎる場合は収益性が損なわれるため、バランスが重要です。
また、初期費用の改善策としては以下の方法が挙げられます。
- ゼロゼロ物件(敷金・礼金ゼロ):初期費用を抑えたい層に人気で、特に若年層や転勤者に効果的な対策です。
- フリーレントの導入:1〜2か月分の家賃無料期間を設けることで、契約率アップを期待できます。
4. 入居条件を緩和する
ペット可物件への転換や外国人対応など、条件設定を緩和することも入居率アップに効果的です。ただし、条件を緩和する際にはリスク対策が不可欠であることから、以下のような対応を併せて行うことをおすすめします。
- 家賃保証会社の活用:保証人がいない場合でも、家賃滞納リスクを軽減できます。
- 物件ルールの明示:ペットの種類・サイズ制限や騒音対策、ゴミ出しルールなどを契約時に明確に提示することで、入居後のトラブル防止につながります。
- 管理体制の強化:外国語対応スタッフを配置したり、緊急時の連絡体制を整えたりすることで、安心して入居してもらえる環境を構築できます。
家賃保証会社については別の記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
>>空室対策に効くリノベーションは?種類や費用、注意点を解説
5. 募集活動を強化する
物件の魅力が十分にあっても、入居希望者に情報が届かなければ契約にはつながらないため、募集活動の質と量を高めることも大切です。具体的には、以下の対策によって物件の特徴を最大限にアピールしましょう。
- ポータルサイト掲載の最適化:賃貸情報サイトに掲載する物件情報を充実させることで、反響数アップを期待できます。
- SNSや動画の活用:InstagramやYouTubeなどで物件の魅力を視覚的に伝えることで、特に若年層に対して効果的に訴求できます。
- 仲介会社との連携強化:担当者が物件の魅力を理解しやすいよう、物件の特徴やターゲット層を明確に伝えることが重要です。
なお、募集活動時に掲載する写真や動画は物件の第一印象を左右する重要な要素です。室内が明るく広く見える写真や生活イメージが湧く動画などを用意することで、反響率や成約率を大きく高める効果があります。
6. 内見時の印象改善に努める
内見時に好印象を与えられるかどうかが成約率に直結するため、以下のような対策によって「住みたい」と思わせる演出を行うとよいでしょう。
- 室内・共用部の清掃を徹底する:特にキッチン・浴室・トイレは「生活の質」を左右するため、プロのハウスクリーニングも検討することをおすすめします。
- 照明と空気感を整える:内見前には換気を行い、照明をすべて点灯して明るく清潔な印象を演出することがポイントです。
- 丁寧な対応:笑顔での挨拶や物件の魅力を的確に伝える説明力、入居者の質問に対する誠実な対応が好印象につながります。
7. 管理体制を見直す
物件の管理状態は、入居者の満足度や定着率に直結する重要な要素です。定期点検・清掃を徹底し、クレーム対応を迅速に行って入居者満足度を高められるよう、信頼できる管理会社を選定しましょう。
もし既存の管理会社に不満がある場合は、別の会社への変更を検討することをおすすめします。
管理会社の選び方については別の記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
>>管理会社の選び方ポイント5選
管理会社の変更については別の記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
>>賃貸マンションの管理会社を変更する方法とトラブルを避ける注意点
高い入居率を長期的に維持したい方へ

空室対策を一時的に乗り越えるだけでなく、安定した入居率を長期的に維持するには「管理体制の質」が極めて重要です。入居率改善に強みを持つ管理会社の力を借りることで、空室を効果的に解消し、入居者満足度の高い管理体制を構築できます。
LIXILリアルティの賃貸管理システムは、LIXILのグループ会社として長年培ってきたノウハウを活かし、数多くのオーナー様へ不動産収益の最大化をサポートしております。
主な強みは以下の通りです。
- 空室対策に強い募集力:自社店舗・Web広告・LIXIL不動産ショップネットワークを活用した広範な募集活動により、早期成約を実現します。
- 24時間対応のクレーム窓口:設備不具合や騒音などのトラブルに迅速対応することで、入居者の安心感を高め、退去リスクを軽減します。
- 最適な家賃設定の提案:近隣相場や物件特性を分析し、オーナー様と協議のうえで適正な家賃を設定します。
- 建物の無料診断・リフォーム提案:有資格者による定期診断で、資産価値の維持・向上をサポートします。
空室に悩んでいる方、管理業務の効率化を図りたい方は、ぜひ一度相談されてみてはいかがでしょうか。
まとめ
賃貸経営において入居率は、収益の安定性や物件の資産価値に直結する重要な指標です。空室リスクが高まる要因はさまざまですが、放置せずに戦略的な対策を講じることで入居率の改善を期待できます。
本記事でご紹介した7つの改善策は、どれも実践的かつ効果的な手法です。立地や設備、家賃設定、募集活動、内見対応、管理体制など、物件のあらゆる側面を見直すことで、入居希望者に選ばれる物件へと生まれ変わらせることができます。
そして、こうした取り組みを継続的に支援してくれる信頼できる管理会社の存在も、安定経営には欠かせません。ぜひ入居率改善に強みを持つ管理会社を活用し、収益の最大化を効率的に目指していきましょう。